ホームページ「災害伝承から防災へ」の取り組みは,300年前の悲惨な土石流災害の伝承を記憶に留め,将来へ伝承していくこと,そして,耳納山麓に住む住民の皆様を対象に土石流災害から命を守るための防災学習ツールを提供することを目的に実施しました.その取り組みは,JSPS科学研究費(課題番号JP20K01144,「地域の災害伝承の解読に基づく災害リスクの再構築 -福岡県耳納山麓を対象にしてー」:西山浩司(代表:九州大学),細井浩志(活水女子大学),広城吉成(九州大学))に基づいたもので,日本学術振興会科学研究費助成事業の支援を活用させて頂きました.ここに深く感謝申し上げます.また,九州大学大学院工学府都市環境システム工学専攻の小野 優君(令和3年度修士修了)は,筑後川流域に残る災害の古記録の解読に精力的に取り組み,技術的なサポートを含め,HP作成と研究の進展に大きく貢献しました.感謝とともに,今後の活躍を期待しています.
このHPでは,うきは市の西見家文書「壊山物語」(うきは市立浮羽歴史民俗資料館所蔵)を使用させて頂きました.その古記録は,耳納山麓の土石流災害に対する具体的なイメージを与え,将来の災害に備えるための第一級の災害史料です.その解読には,東北大学名誉教授 平川 新先生,うきは市の郷土史家 内山義則氏の御尽力で完成した翻訳文(読み下し文)を活用させて頂きました.くずし字が初心者のHP作成者にとって解読は困難を極めましたが,先生方の解読文のお陰で古文書の理解が進み,耳納山地で起こった山汐(土石流)の現象,及び,当時の深刻な被害状況の全体像が明らかになり,耳納山麓の防災HPを作るに至りました.現在,他地域の災害史料の解読を進めており,この取り組みが出発点になったことは言うまでもありません.ここに,西見家と浮羽歴史民俗資料館の関係者の皆様,並びに,平川 新先生,内山義則氏には深く感謝申し上げます.
この取り組みでは,壊山物語を被災事実を確認するため,耳納山麓の地区(300年前の村落)を一つ一つ丹念に調査しました.うきは市役所市民協働推進課(2021年度まで所属)の井浦憲剛氏には,各地区の調査に何度も繰り返し同行して頂き,地区防災に欠かせない地区の皆様との繋がりを作ることができました.そのお陰で,5年以上に及ぶ地区ごとの調査が有意義なものとなり,災害伝承にある被災地の特定や被災地で何が起こったのかなど地区特有の出来事の解明に繋がった次第です.また,うきは市役所市民協働推進課の古賀一聡氏には,地区の災害学習会や街歩きの実施の取り組み,HP作成に必要な情報提供など全般にわたり支援して頂きました.さらに,地区ごとの災害伝承を明らかにし,地区防災を進めていく上で,妹川地区,冠地区をはじめとした住民の皆様に協力を頂きました. ここで紹介した井浦憲剛氏,古賀一聡氏をはじめとして,うきは市役所市民協働推進課の皆様,石碑や古文書解読の支援を頂きました同市教育委員会の関係者,この取り組みに協力頂いた地域の方々に対し,深く感謝申し上げます.
さらに,久留米市役所の網中達郎氏,花田克善氏には,久留米市竹野校区,山本校区の災害学習会,街歩きの実施,久留米市の土石流災害に関連する情報提供を通して,久留米市側の耳納山麓における災害伝承の調査協力を頂きました.また,竹野校区富本自治会には,災害学習会や街歩き,災害図上訓練の実施で協力を頂きました.網中達郎氏,花田克善氏をはじめとして,建設都市部防災対策課(調査当時)の皆様,協力を頂いた地域の方々には深く感謝申し上げます.
このHPでは,災害石碑の碑文を蘇らせ,地区特有の災害リスクと結びつける取り組みも実施しました.その調査では,独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 上椙英之先生が開発した拓本の新しい技術「ひかり拓本」を使用しました.上椙英之先生には,拓本作業に御同行の上,災害石碑に関する貴重な意見・情報を頂きました.また,300年前の土石流災害の惨状(耳納山麓の安富村,屋形村)を伝える史料「医王山南淋寺縁起」が,筑後川の北側にある南淋寺に伝わっています.南淋寺住職の進野晨祥氏には,平成29年7月九州北部豪雨で被災した南淋寺の調査の際,壊山物語を補完する重要な史料「医王山南淋寺縁起」を紹介して頂きました.両氏に深く感謝申し上げます.
最後に,浮羽まるごと博物館協議会会長の佐藤好英先生,うきは市 髙木典雄市長には,この取り組みを全面的に支援して頂き,誠にありがとうございました.ここに深く感謝申し上げます.
令和4年(2022)5月12日
九州大学大学院工学研究院環境社会部門 西山浩司