土砂災害警戒区域の見方と土石流動画(外部サイト)

 

 土砂災害警戒区域の見方

土砂災害警戒区域は,急傾斜地,土石流,地すべりについて設定されています.その詳しい解説については,広島県の土砂災害ポータルひろしまをご参照ください.系統的に理解できて大変勉強になります.

 

そのHPの中で土砂災害警戒区域についての解説については ⇒ こちら

 

また,土砂災害防止広報センターのホームページには,土砂災害を学べる多くの教材が用意されていますのでご参照ください.

 

耳納山地では,土石流による災害リスクが最も高いので,土石流に対する土砂災害警戒区域について説明します.土砂災害警戒区域には2種類あり,イエローゾーンと呼ばれる土砂災害警戒区域とレッドゾーンと呼ばれる土砂災害特別警戒区域があります.前者は,土砂災害のおそれがある区域(下図の黄色の区域),後者は,土砂災害で建物が破壊され、人命に大きな被害が生ずるおそれがある区域(下図の赤色の区域)です.どちらの区域も危険ですが,破壊の程度が大きい区域が土砂災害特別警戒区域ということになります.まずは,ご自宅が区域内に入っているかどうかを,このホームページにあるハザードマップで確かめましょう.

 

ここで注意してほしい点は,ハザードマップで示されている土砂災害(特別)警戒区域の範囲はあくまでも計算値であり,推定値です.土石流が指定された区域を超えてくることや土石流の流れが左右にずれることもあるので注意が必要です.「家が土砂災害警戒区域の端だから大丈夫」,「家が土砂災害警戒区域にギリギリ入っていないから大丈夫」と思わないようにしましょう.

 

また,指定避難所が,土砂災害警戒区域や浸水域に場所に立地していることがあります.下記の久留米市竹野校区の場合を例に挙げて説明します.竹野校区では,富本地区にある竹野校区コミュニティーセンターと竹野小学校が避難所に指定されていますが,いずれも土砂災害警戒区域内にあります.竹野校区コミュニティーセンターは土石流が真横の谷川を通過する恐れがあるので,地元の方の話では避難所として使わないことになっています.一方,竹野小学校は土砂災害特別警戒区域に入っていますが,土石流が直撃する校舎(鉄筋)の反対側にある体育館を避難所として使っています.その場合,避難途中の住民が土石流に巻き込まれる恐れがあるので,避難するタイミングが大事になってきます.しかし,竹野小学校が大丈夫とは言えないので,避難が可能な状況であれば,竹野小学校よりも土砂災害リスクが低いと考えられる草野小学校や水縄小学校に避難する選択肢も検討してみてもよいと思います.もちろん,指定避難所以外に安全を確保できる場所があれば,それも避難の選択肢の一つです.

 

久留米市の竹野校区コミュニティーセンター以外にも,被災する恐れがある指定避難所があります.下記の指定避難所のリスクをご覧ください.

 

福富校区コミュニティーセンター(うきは市延寿寺地区) ⇒ 延寿寺村のページ

 

尼ヶ瀬公民館と旧妹川小学校(うきは市妹川地区) ⇒ 妹川村のページ

 

 

 

 土石流動画(外部サイト)

 

下記の国土交通省ホームぺージにある土石流の動画を何度も眺めて,どんな災害が起こるか想像してみましょう.動画は,長野県焼岳上々堀沢,長野県木曽川滑川,岐阜県神通川水系白谷の土石流の様子です

 

土石流動画(国土交通省) ⇒  こちら

 

動画を見ると,巨大な岩が上流から流れてきていることがわかります.最初に大きな岩が現れ,その後,岩の大きさが小さくなっていることに気付きます.最初に現れた大きな岩が家に直撃したら・・・・目の前にやってきたら・・・・と想像してみてください.言うまでもなく,谷川に近い危険な場所から早めに離れないと太刀打ちできません!動画から災害のイメージできたら,土石流から命を守るため,個人で,地域で,学校で,地域の防災士の皆さんで,何ができるか対策を考えていきましょう.

 

耳納山地の場合,沢に沿って土石流が発生するので,イメージ的には長野県焼岳上々堀沢で起こった土石流と同じことが起きると想定されます.直観的には谷川を流れ下る土石流から離れれば良いので,土石流から垂直な方向に逃げることが防災のセオリーとなっています.しかし,土石流が発生する状況では,豪雨で前に進めない,夜暗くて動けない,既に水の流れが強くて歩けないなど,避難すること自体が無理な場合が十分想定されます.結局,逃げ遅れた場合,家の中の最も安全な場所に移動し,あとは祈る以外に選択肢がありません.従って,前日の段階から,また,豪雨が発生する前から,テレビの気象情報の解説,雨雲レーダー,気象庁のキキクルなどの現況,自治体からの避難情報,地域の防災無線などをリアルタイムに把握した上で,迅速な避難行動に移せるように準備万端にしておくことが大事です.

 

 砂防堰堤がある地区の防災

砂防堰堤は土石流から下流の地域を守る重要なハード施設です.実際に土石流を防いで地域を守った事例はたくさんあり,豪雨による土石流の大部分を防いでいることは確かです.広島市安佐南区に建設されているような巨大な砂防堰堤であれば,土石流を防いでくれる確率は格段に上がるでしょう.

 

一方,国内にある多くの砂防堰堤は大小様々で,老朽化が進んでいるものもあります.そのため,設計段階の想定を超える土石流が襲ってきた場合には,堰堤を超えたり,堰堤自体が破壊されることが実際に起こっています.また,老朽化した砂防堰堤が破壊されることもあります.もちろん,砂防堰堤の機能が十分発揮できなくても被害を軽減することがありますが,大なり小なり下流側に被害が出ます.

 

そのような現実があることに留意すると,砂防堰堤がある地区の防災は,砂防堰堤(ハード対策)で補えない部分を適切な避難行動(ソフト対策)で補っていくことが基本となりなす.まず,「砂防堰堤があるから大丈夫,避難の必要はない」と思い込まないようにしましょう.そして,砂防堰堤の有無に関係なく,地域全体の防災意識の維持に努めるとともに,万が一に備えた避難対策を地域で共有することが大事です.